世界でいちばん、大キライ。
「あ、あー……悪い」
「不器用で、でも優しくて。歳の差ある私になんて言われたくないかもしれないけど、可愛いな、って思うこともありました」
「可愛いって……」

今度赤面するのは久志のほう。
どぎまぎとしながら抱きついている桃花と距離を取ろうとするが、きゅ、と桃花が手に力を込めて抵抗する。

「好きです」

顔の横で聞こえた桃花の声に、久志は体が沸騰しそうになるほど熱くなる。
添えた片手の所在も、宙ぶらりんのままの右手もそのままで。

久志は数秒桃花の言葉を反芻するように、ふっと瞼を閉じた。
その間も桃花の手が、ぎゅうっと力が入っているのを首に感じると、空いた右手も桃花の背に添えた。

細い体を軽く引き寄せ、抱きしめる。
桃花の小柄な身体は、久志の胸の中にすっぽりと覆われた。

「……あんたの淹れたコーヒーがいちばん好きなんだ」

耳の奥に響く久志の低い声。

抱き留められてる体にも、声と同時に振動が伝わってきて、桃花はそれが温かく感じる。
懸命に伝えてくれてるのはわかっていたが、決して早くはなかったタイミングで来た久志に、ほんの少し意地悪な気持ちが働いた。

「……コーヒーだけ、ですか?」

するりと伸ばした腕を緩め、久志の顔を仰ぎ見る。
久志は一瞬目を泳がしたが、覚悟を決めたのか、桃花に視線を戻して照れた様子でぼそっと口にした。
< 191 / 214 >

この作品をシェア

pagetop