世界でいちばん、大キライ。
「あのコーヒーの香りも、味も。……キミも、好きだ」

回りくどい言い方は、素直に自分の気持ちを表現することに慣れていない久志の、ちょっとした抵抗から。

それでもそんなことすらも愛しく思えるほどに、桃花は飛び上がりたいくらいに嬉しくて。

「……言わせておいて、なんにも反応ナシかよ。羞恥プレイだな」

わざとらしい咳払いと共に、わざとムッとしたような表情を作って文句を零す。
だが、そんな仮面もすぐに剥がされ、吃驚するように目を見開いた。

「本当に、もう……」

そう言った桃花の目からは、辛うじて堪えていた涙がひと筋落ちる。
一度零れてしまった涙は、次々と溢れ、嬉しいのか悲しいのかわからないくらいに顔をくしゃくしゃにしながら嗚咽混じりに続けた。

「うれしすぎます」

自分を好きになってくれた。
それと同時に、自分の淹れたコーヒーまでも、彼を魅了していたとさえ聞けば、これ以上のない幸福感に襲われる。

右手の甲で目元を拭いながら、肩を震わせてしゃくりあげる。
いつも堂々としていた印象の桃花が、子どものように涙を流す姿を見て、久志は言葉で言葉で言い合わらせないような感情が急に湧き上がった。

堪らなくなったその感情に急かされるように、久志は桃花を再び自分の腕の中へと閉じ込める。

「オレの言葉なんかでそんなに泣くなよ……」
「……久志さんだからです」
「ああ、もう……!」
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