世界でいちばん、大キライ。
桃花の心境がわかる久志は、斜め後ろを歩く桃花の頭にポンと左手を置いた。

「たぶん、その前向きな力が道を切り開いてくれるだろ。他人(オレ)の道まで切り開いたんだから」
「え……? それってどういう」
「ああ、駅だな」

すぐに進行方向を向いてしまった久志の横顔に疑問の眼差しを向けるも、久志は駅の看板を見つけて話を逸らす。

駅の入り口まであっという間に辿り着くと、そこではじめて桃花が久志の前に出て振り返った。
お互いのつま先を視界に入れながら、桃花が上擦った声を出す。

「あのっ……次は――」

両想いになった途端に重い発言をしようとしてるのかもしれない。
そんなことを考えてしまった桃花は途中で言葉を飲み込むように口を閉じてしまう。

それでもなにも言わない久志をゆっくりと見上げると、駅の蛍光灯に照らされた顔が自分を真っ直ぐと見つめていて。

「金曜日には行くから」

ふっと小さく笑いながら、まるで子どもをあやすように言われてしまったことが恥ずかしくて、桃花は俯いた。

「……はい」
「それと」

〝続き〟があるなど思ってなかった桃花は、思わずバッと顔を上げる。

「店の邪魔になるようなら、麻美の勉強、オレんちでしてくれてもいいから」

暗にそれは、久志の自宅に〝いつでもきていい〟というようなこと。
予想外な言葉を貰い、桃花は抑え切れず、こどものように笑顔全開で喜びを表現してしまう。

「また、連絡します……!」

フ、と目を細めて笑う久志の顔が桃花の胸を締め付ける。

送ってくれた久志に深く一礼して、軽く手を上げて別れた後も、その切ない感覚はずっと胸に残ったままだった。

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