世界でいちばん、大キライ。


翌日。

月イチの定休日を急遽持ってきたため、ソッジョルノは静かなまま。
桃花は了と共に、空港へと見送りに立っていた。

「リョウ。今度はオレのとこにも遊びにきてよ」
「そうだなぁ。店の方もあるからすぐには無理だろうけど、考えとくよ。桃花ちゃんの様子も気になるし」
「あ! リョウ、オレ目的じゃなくてモモカだけが目的で来るんだ」

よろける大袈裟なリアクションでジョシュアを見て、桃花は了の後ろでくすくすと笑った。
笑顔の桃花を見たジョシュアは、安堵したような表情を浮かべて話しかける。

「モモカ。来月、待ってるよ。イロイロ準備しておくから」
「はい。よろしくお願いします」
「ウン。タイムリミットだ。Bye!」

初めてソッジョルノで見た時と同じように、爽やかな笑顔で白い歯を見せて片手を振りながらジョシュアは行ってしまった。

人ごみに飲まれるように消えて行ったあとも、しばらく了とふたりで立ったまま。

「不思議な人でしたね」
「昔から変わらないよ。久しぶりに会ってるのに、久々って気がしないヤツだよ、ホント」

ジャケットのポケットに手を突っ込みながら言う了が踵を返す。
それでも桃花は、まだジョシュアが去った方向に視線を向けていて。

「想像してる? 次、自分があそこを通って行くのを」

背中から了の声が聞こえてきて、桃花は凛と背筋を伸ばす。
そして、グッと手を握ると、ひとつ息を吐いてくるりと振り返った。

「未知だし、不安もありますけど。でも、きっと不安になっていられないくらい、毎日目まぐるしいと思います」

すぐ先の未来を見つめるような桃花の眼差しを見た了は、ニコリと笑う。
立ち止まっていた了の元へ歩いて行くと、ふたりは並んで歩き始める。

「今日定休日だしさ。他所の店ちょっとはしごしてから、ウチの店で練習するとかどう?」
「え? いいんですか? ぜひご一緒させてください」

和やかに会話をしながら、桃花は了と共に空港を後にした。

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