世界でいちばん、大キライ。
いつものようにエスプレッソを抽出し終えると、ミルクピッチャーを手にし、目を閉じた。

一度見たジョシュアの姿を瞼の裏に浮かべる。それからすぐに目を開け、思い描いたイメージをそのままに、ミルクをカップに注ぎ込む。

普段よりもやや大きく回し入れ、後半には小さく左右に揺らしながら描いた線を縦に注ぐと、リーフと同じ葉っぱの絵柄が完成する。

揺れる水面のカップをそっと麻美の元に運ぶと、両手を揃えてきちんと座る麻美がラテに視線を向けた。

「いただきます」

麻美がカップを両手で持ち上げ、そっと口に含む。
店内は他に客もいなかったので、桃花はその場に立ったまま、麻美の感想を待った。

「なんか……もっと飲みにくいものかと思ってた」
「久志さんがよく飲むのは麻美ちゃんにはちょっと合わないかもしれないけど、ラテならミルクがたくさん入ってるから」
「そっか。でも、それにしてもなんかマイルド?っていうか。もっと無味なの想像してた」

ラテに視線を落としたまま、少ない語彙で懸命に桃花に伝える麻美に、桃花はトレーを抱えながら返す。

「一応ね。それ、意識してみたの。少しでもコーヒーに慣れてない人に抵抗なく柔らかい感じで届けたくて」

そのラテと同じように柔らかな微笑みを向けて桃花が言うと、麻美がまたカップを口につけて傾けた。
小さな喉をコクンと鳴らし、大事そうにカップを持ったままニコッと笑顔を返す。

「うん。桃花さんの味、覚えておくから。遠いかもしれないけど、お母さんに連れてってもらって、また桃花さんの淹れた飲み物、飲みに行くよ」


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