世界でいちばん、大キライ。
「大丈夫か?」
「……大丈夫、じゃない! なんでそんな大事なことっ」
「いてっ。いや、そんなに怒らなくても」

思わず振りかざした拳が久志の身体に当たる。
怒っているわけではない。だけど、あまりに大きなサプライズすぎて、どう受け止めていいのかわからない。

感情をどうセーブしていいかわからないまま悶える桃花を、久志はふわりと抱きしめた。

「悪かった。でも、本当に直前まで辞令出なかったし。ダメなんだとオレも思って」
「『ダメ』? なにが?」

引っ掛かるワードに食いついた桃花が問いかけると、久志はガシガシと頭を掻いて答える。

「いや……異動願ってやつが」

予想もしない答えに、再び桃花の動きが止まる。
目を見開いたまま、久志の横顔にさらに問う。

「英会話がイヤで、避けてたんじゃ……」
「誰かのおかげで、飛び込むことが出来たよ」
「え? じゃあ元々はこっちに来たかったりしたってこと?」
「まぁ、仕事の幅も広がるし、出世するにはだな……っつーのは置いといて!」

高い上背を屈めた久志は、突然触れるだけのキスをした。

こんな屋外でそんなことをする人じゃないのに、とさらに度肝を抜かれた桃花は、口に出すことも出来ずに丸くした目で訴える。

「日本じゃねーし。……ていうか、半年も離れてたから、なんかもう」
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