世界でいちばん、大キライ。
薄らと赤い顔で言い訳がましく言いながらも、そんな行動を起こした久志が桃花にとっては大事件で何から言えばいいのか見当もつかない。

「……ああ。キャラじゃないって思われるついで」

手の甲で軽く口元を押さえた久志が、逸らしていた目を桃花に向ける。
視線がぶつかった時に、こんなことを言った。

「きっと、世界中どこだって、オレ、桃花を追いかけられる気がする」

さわさわと少し伸びてきた芝生が涼やかな音を立てる中で、聞こえたセリフ。

「……もう一回、言って?」
「バカ。二度も言えるか」

ぶっきらぼうに答えると、久志は少し乱暴に桃花を自分の身体に引き寄せた。

「オレ、桃花の淹れたコーヒーを相当欲してたんだな」
「また。コーヒーだけですか」

ぷぅ、とふくれっ面で返す桃花に、「ははっ」と眉を下げて久志が笑った。

「でもまた、桃花のコーヒーが飲めるんだ」
「豆はソッジョルノの時と、ちょっと違いますけどね」
「……会いたかった」

消えてしまうくらいの小声が聞こえてきて、桃花は胸が熱くなる。
そのまま久志の背中に両手を回し、ギュウッと抱き締めた。

いつの間にか消えてしまっている虹なんかには気付くはずもなく、桃花は久志の腕の中に納まる。

そしてただ、互いにそのぬくもりを感じていた。

「――私も……!」

懐かしい感触と、コーヒーの香りの中で。


世界でいちばん、大好きな人の――。









END


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