世界でいちばん、大キライ。
メールを恐る恐る見た久志はガクッと項垂れる。

やはりここにあるあのクマは桃花のもので、それは昨夜、ここにいたということの証明。
気まずい思いは、気のない相手を抱いてしまったときよりも遥に上回る――。

それは、冷静な自分ではまだはっきりと認めてはいないが、桃花の存在が気になるものではあるからだ。
好きかと問われたらまだ即答できない。でも、僅かにでも心を乱す存在。

そんな相手に失態を犯してしまったとなれば、明瞭な理由を上げられないにしても、落ち込んでしまうことには違いない。

(誤解させたか……? いや、誤解じゃなく期待か)

メール画面に視線を落としたまま、微動だにせず考える。
〝誤解〟だとか〝期待〟だとか、いつからそんな、上から目線でモノを言える立場になったのか。
自分を叱咤するように思い直すと、失笑した。

そのまま真っ暗になってしまった画面をそのままに、久志は携帯を机に置き、代わりに少し水の残ったグラスを手にした。

「お前、帰ってくるの早いな」

ガタンとシンクにグラスを置きながら久志が言うと、麻美はちらりと目を向ける。
そのなにか言いたげな視線を受けた久志は、少し不愉快そうに口にした。

「なんだよ。これだけでも『過干渉』とかって言うのかよ?」
「桃花さんと仲良くやってるんだ」

突然飛び出してきた言葉に、久志は不覚にも咄嗟に出すものも見つからない。
数秒後、ようやく喉元から使えるような滑り出しで声を出す。
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