世界でいちばん、大キライ。
(――会える)

トクン、とまた大きく胸をならし、瞬きも忘れて携帯画面に釘付けになる。
もちろんわざと久志の部屋に忘れ物をしてきたわけではない。本当にたまたま落としてきただけのこと。

そして、その落し物はそれほど金具が緩くなるほどに、ずっと桃花が身につけていた大事なもの。
それが見つかった安堵感と、さらに休日の久志にまた会えるという幸福感。

桃花は無意識に頬が緩むほど、その瞬間、心が満ちていた。
しかし、ふと、メールの続きが改行後にあることに気付いて視線を落とす。

【昨日は、迷惑掛けて悪かった】

その一文に、一気に気持ちに靄がかかる。

「迷惑なんかじゃ……ないですよ」

ぎゅ、と携帯をきつく握って小さく零す。

久志の本意はわからない。
けれど、その一文からは、プラスに捉えられることが桃花には見つからなくて。

昨夜のことを覚えていないのか。
それとも、罪悪感を感じつつ、後悔しているのか。

つい先程、自ら『覚えてない方がいいかも』などと頭を掠めたはずなのに、いざ、本当にそうかもしれないと思うと胸がきゅうと締め付けられる。

もし、これがきっかけで余計に気まずい関係になってしまったら……?

それは、現実にありうる話。
だからこそ、桃花は早く明日になってほしいと思った。

(早く会って、早く顔をみたい)

一分一秒でも早く――……。
そうして、彼がどんなふうに思っているのか。それを確認して、きちんと伝えたい。

〝私は少しも迷わなかった。後悔なんかしてません〟――と。

< 75 / 214 >

この作品をシェア

pagetop