世界でいちばん、大キライ。
翌朝。

いつもより少しだけ丁寧に施した化粧と、念入りにブローした髪で待ち合わせの場所へと向かった。

携帯の時計を見ると、午前9時半前。
待ち合わせのコンビニまでは約20分。約束の時間は10時だから、余裕で10分前には着く。

肌寒い風の中、トレンチコートの前を押さえるようにして、桃花はコンビニへとたどり着く。
店内に入ると、以前と同じように雑誌コーナー前に立った。

それからは、時計を1分刻みで見るくらいに気にしながら、それに伴って鼓動が加速する。
バクバクと騒ぐ心臓を抑える術はなく、ただひたすら桃花は何度も小さく深呼吸を繰り返していた。

(最初のあの日、久志さんは5分前に来てくれた。きっと、今日も同じように来てくれるはず)

まだ知り合って日は浅いが、麻美とのやりとりを含め、いろいろと見てきた久志は約束事を守るタイプだ、と桃花は思っていた。

麻美に言わせれば少し細かいのかもしれないが、ルーズなのを嫌う気がする。
そして、桃花の見解だが……久志は不器用な優しさを持っている。
言葉にそれを表すことはしないけれど、態度や行動がそれを物語っている気がして。

それに、昨夜、本人の口から聞いた。

『いつも、その先の自信が持てなくなる』

ただそれを真正面から解釈すれば、不安感がいっぱいの臆病な人間なのだろうということだけれど。
桃花はそうとだけは捉えなかった。

責任感が強すぎる故……自分のことというよりも、その先に〝相手への〟なにかしらの負担や心情を考えて一歩退いてしまうのではないか、と。

相手の考え(思い)に100パーセント応えられないなら傷つけるだけだ、と自分に厳しく線引きしているように思えて。

小心でネガティブなその言葉の中に、勝手にそんな美化したような思いを馳せる。
完全に久志に心を奪われている桃花は、頻りに時計を気にし続ける。

店内の時計が10時を指した。
桃花は雑誌を手にしながら、窓の外をそわそわと窺う。

絶対に遅れることなく来てくれるはず。
そう強く思っていた分、時間が過ぎて行くほどに、桃花の不安は急速に大きくなっていった。

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