世界でいちばん、大キライ。
「……曽我部さん?」
「え? あ、すんません」
ボーッとしながら桃花の淹れたコーヒーを久しぶりに口にした久志に、水野が心配そうな顔をして覗き込む。
「もしかして、一昨日のお酒がまだ残ってます? なーんて」
「いや、さすがに二日も引き摺るほど老いちゃいないよ」
軽く笑って返事を返すも、久志の心は別のところにあるまま。
水野はどこか上の空の久志に気付きつつも、それを冗談めいた会話をちょっとしただけで、核心には触れなかった。
そして、栗色のロングヘアを逆手で耳にかけると、隣の空席に置いていた紙袋を久志に差し出す。
「突然ごめんなさい。でも、新品のものがほとんどで……勿体ないと思っちゃって」
「いや……というか、いろいろとびっくりして」
「びっくり? どうして?」
「オレ、そんな話水野さんにいつしたかなって。それと家がこの辺てことも」
久志はカチャリとソーサーにカップを置くと、浅く眉根に皺を寄せて首を傾げた。
すると、水野は眉を少し下げて、申し訳なさそうに笑った。
「ごめんなさい。会社で……部長が綾瀬くんに姪っ子さんの話をしてるところに居合わせちゃって」
「いや。別に隠すことでもないから」
「家がこのあたりだって知っていたのは、一昨日わたしもタクシーに乗ってたので」
「ああ、そうでしたね」