世界でいちばん、大キライ。
「突然過ぎましたね。ごめんなさい」
「え? あ、いや……」
「思い立ったらすぐ……って性格で、わたし。……だけど、曽我部さん、今なにか気になることでもあるんじゃないですか?」
「え――……」

水野が指摘したことに、久志は頭よりも先に心が反応した。
キシッと確かに音をあげて、ほんの僅かに眉間に皺を寄せる。

目の前にいるのは社内の人間。
そんな毎日のように顔を合わせる存在の彼女に、自分の今の心情を見透かされてしまえば居心地が悪くなることこの上ない。

咄嗟に久志はその先に踏み込まれないように、と口にする言葉を考えると……。

「姪っ子さんのことが気になるんじゃないですか?」

ニコッと小首を傾げるようにに微笑まれると、久志はホッと胸を撫で下ろした。

「……ええ。もうそろそろ戻らないと」
「じゃあ、これを飲んだら出ましょうか」
「なんかほんと、重ね重ね……会社ででもよかったのに」

すっかり気を抜いて、思ったままに口にした。

久志の言ったことに、水野は飲みかけのラテをコクリとまた喉に流し、にっこりと口角を上げる。しかし、その穏やかそうな笑顔に反して、一瞬細めた瞳は鋭かった。
その些細な水野の変化には、コーヒーに視線を落としていた久志は気付くこともなく……。

即座に柔らかな表情で、水野は女性らしい細い声で答える。

「ほら。さっきも言いましたけど、思い立ったら、ってやつです。……それに、曽我部さんの休日の姿、見てみたかったですし」
「は?」
「いえ。あ、ここはよく来られるんですか?」

特に深い意味の質問なんかじゃない。
そう頭でわかっているはずなのに、なぜか心がざわついて……。
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