世界でいちばん、大キライ。
「モモカ。オレは今回の滞在中は、キミを口説くことにする」
(……は? 今、なんて――)
「オレと一緒に……」

色白だけど、桃花よりも二回りほど太くしっかりとした腕が桃花へと伸びていく。
ゴツめのシルバーリングをはめた長い指先が、桃花の髪に触れようとしたとき――。

カラン!という音が割り込んできて、桃花はハッと入り口に目を向け、「いらっしゃいませ」と口にする。

ジョシュアは慌てる様子は見えないが、中断させられた手を元に戻して首を竦めると、了に苦笑いした。
そんな〝楽しい遊びを邪魔された〟と、いうような軽いリアクションのジョシュアに、了は溜め息を吐く。

「……ジョシュ、からかってんの? お前は相変わらず女に目が無――」
「彼女はきっとまだ伸びる」
「え……? それって」

了が目を丸くしているとき、桃花も同様な表情をしていた。

しかし、それはジョシュアに対してではなく、来店した客を見て、だ。

桃花は反射でトレーをカウンダ―の端において、一歩入口へと足を向けていた。
それもあって、了たちの会話は耳に届いていない。

……と、いうよりも、視界に映る相手の方がふたりの会話なんかよりも余程重大な出来事だったから――。


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