薫子さんと主任の恋愛事情
もしかしてあの子は、大登さんと坂下さんの子供? それって隠し子ってこと? なのに私のことが好きで、付き合って欲しいなんて言ったの?
考えたくもないことが次から次へと湧いてきて、頭の中はパンク寸前。
でも大登さんはすっきりしたような顔をして立ち上がると、私のことも立たせて幸四郎の前まで移動した。
「初めまして。薫子さんとお付き合いをさせていただいています、八木沢大登と言います」
大登さんは、なんの躊躇もなく幸四郎に頭を下げる。
こんなシーンに出くわしたことのない幸四郎は、動揺極まりない。あたふたしながらも頭を下げると「薫子の兄です」とひと言、ぎこちなく答えた。
当の私はというと。
大登さんに手を繋がれたまま。逃げたくても逃げられず、黙ってふたりのことを見ているだけ。
一体、この後どうなるの?
大登さんに事の真相を問い詰めて、その答え次第では別れることになる……。
そうなってほしくないのに、そうなるような事実ばかりで、ますます悲しくなってくる。