LB4
「はい、じゃあ今日は解散」
藤川のかけ声でみんなが立ち上がる。
田中は挨拶どころか私の顔すら見ずに、さっさとスクバを持って一緒に帰る友達の方へ行ってしまった。
ほんとなんなの?
もう友達やめてやる。
あんなやつと付き合うとか絶対ないから。
「江頭。職員室にノート取り来い」
「はーい」
呼ばれて仕方なく立ち上がる。
恭子と織恵に今日も先に帰るよう伝え、藤川を追うようにして職員室へ向かった。
田中はまだ教室にいたけれど、あたしが教室に戻った時にはきっといないだろう。
「失礼しまーす」
放課後の職員室は、コーヒーとお菓子の匂いがする。
あたしたち生徒が昼休みにつまむようなスナック菓子とは違う、少し高級な甘いお菓子の匂いだ。
それから若い女教師の香水の匂いと、中年教師の加齢臭が混じる。
全体的には複雑で変なにおい。
だから生徒には居心地が悪いんだ。
そんなことを思いながら、藤川のもとへ。
「先生、来ました」
さすがに職員室なので、敬語で声をかけた。
パソコンを操作する手を止めてこちらを向いた藤川が、あたしを認識して嬉しそうにニコッと笑う。
「おー、早かったな」
今日一日田中に冷たくされていたからか、ホッとして泣きそうになった。
笑ってくれたことに、なんだかすごく安心した。
「2問ミスってた。どっちも途中の計算ミス。やり方は合ってたよ」
「そうですか」
「どうした? 昨日落ち込んでたと思ったら、今日は随分不機嫌だったな」