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しかし、夏休みを終えてすぐのことだ。
江頭はかねてより憧れていた年上の男にフラれたと、教室で大袈裟に落ち込んでいた。
その絶好のタイミングで、江頭の隣の席に座る田中という男子生徒が、彼女に交際を申し込んだようだった。
俺の見立てでは、江頭は田中になびく。
田中の方は春からずっと江頭を好いていて、そのことはクラス中が認識していた。
鈍感な江頭だけが、田中の気持ちに気付いていないという構図だ。
この二人はいつくっつくのだろうと、クラスでは噂の的になっている。
とうとうその時が来たかと、クラスメイトたちの期待は最高潮。
江頭や田中に近いやつらは、彼らをすぐにでもくっつけようと、コソコソ画策している。
教師としては、微笑ましい光景だ。
しかし男としては複雑である。
どんなに清くあろうとしても、どんなに正しくあろうとしても、江頭のために頑張る田中を応援できない。
頭ではわかっているのだ。
俺は彼らにとって、学校の先生。
所詮30近いオジサンで、大人という別世界の生き物。
俺は彼らと同じフィールドには立てない存在であるのだと。