LB4

ビル内の自販機で缶コーヒーを買い、腰に手をあてて一気飲み。

缶を捨てるとガシャンと大袈裟に音が鳴った。

「いい飲みっぷり」

後ろから声がして振り返る。

よく知る男がひとり、こちらに向かって歩いてきている。

「松本課長。お疲れ様です」

「お疲れ。相澤さん、髪切ってからますます男前になったんじゃない?」

4月に主任から課長へと昇進した彼は、私を育てた先輩だ。

板東にとっての私のような感じで、年は私より7つ上の35歳。

甘いマスクと常時全開のフェロモンを武器に女を食い散らかす、いわゆるゲス男である。

「ええ、おかげ様でますます男が寄ってこなくなりました」

ひとりを除いては。

「可哀想に。寂しくなったらいつでも俺が相手してあげるからね」

「どんなに寂しくなっても松本さんにだけは頼みません」

「えー? 俺ほど安全な男はいないと思うよ。完全に下心オンリーだから後腐れないし、避妊だってちゃんとするし」

「相変わらずのゲスっぷり」

「ヒドイ。終わったら紳士的に駅まで送るのに」

「用が済んだらさっさと帰るんですね。ほんと、勃たなくなればいいのに」

そういえば板東とは後腐れありまくりだし、昨夜は準備がなかったから避妊すらしなかったな。

『俺はずっと、相澤さんとこうすることばかり考えてたんですよ』

なんて言っておいて、コンドームのひとつも持っていなかった。

時期的にないとは思うけど、妊娠したらどうしよう。


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