LB4
そう思った矢先の事だ。
彼女がサッと、図面で顔を隠した。
目だけ出して、じっとこちらを見つめ、尋ねる。
「あたしが男と別れたらどうする?」
「えっ……?」
俺は思わず、前のめりになって立ち上がった。
「別れるんですか?」
もし、それが彼女の近い未来だとしたら。
俺は。
「さぁね。座りなよ、目立つから」
素っ気なく返ってきた答え。
でも、彼女だって、それが俺を大いに期待させる言葉であることを承知のはず。
どういうつもりでそう告げたのか問い詰めたくなったけれど、急いては事を仕損じる。
ちくしょう。
やっぱり振り回されるのは俺の方かよ。
しかもこんなに簡単に。
グッと奥歯と悔しさを噛み締める。
彼女は少し前に、俺には性欲がなさそうだと言った。
なさそう、という言葉の裏に、願望があったと思う。
彼女にとって俺は、可愛い弟分。
あるいは完全に手懐けた飼い犬。
俺の性欲など、見たくないと。
しかし俺は彼女の実の弟でも飼い犬でもない、一人の男だ。
彼女を姉とも飼い主とも思ったことはない。
昨夜、俺はそれを証明した。
俺は十分やったと思う。
あとはもう、今後の彼女次第だ。