LB4
ある夏の夜。
私と板東はクライアントの無理な要望を通すため、二人で残業をしていた。
気付けば時刻は20時。
目処が立ったところで、板東が気付く。
「なんか、外ヤバくないですか?」
止めどなく窓に打ち付けられる豪雨。
魔物の雄叫びのような強風の音。
こんな日に限って、台風が直撃していた。
「このままじゃ帰れなくなりそうだな。電車が走ってるうちに帰るか」
「そうですね」
こんな言葉遣いでも一応性別的には女。
会社に泊まってシャワーすら浴びれなかった、なんて事態は真っ平だ。
急いで会社を脱出。
この天気で傘を差すのは危ないから、濡れて駅まで行くことになる。
メイクが落ちてしまうが仕方あるまい。
落ちたってどうせ大して変わらない。
安全のため電源を切られた自動ドアを手動で開けてビルを出ると、外はまさに嵐だった。
「すごい風!」
風が強くて上手に前に進めない。
雨のせいでちゃんと前が見えない。
大きな雨粒が顔に当たって痛い。
顔をかばい歩き出した、その時。