LB4
「相澤さん、気を付けて歩いてくださいね!」
板東が私をかばおうと前に出た。
濡れたシャツの広い背中が目の前に広がる。
なんだお前、急に男みたいなことしやがって。
「平気だし!」
こいつに助けられるなんて姉御相澤の名が廃ると思い、私は更に前に出る。
すると。
ビヨオォォォォーー……
「おわあっ!」
風に煽られバランスを崩す。
我ながら可愛くない悲鳴だ。
こんな日にピンヒールの靴なんて履くんじゃなかった。
ふらっと2~3歩後退すると、抱き止めるように背中を支えられた。
「おっと。もう、言わんこっちゃない」
耳元で、板東の声が響く。
条件反射で声がした方を向くと、至近距離に彼のキレイな顔があってドキッとした。
「あっ……りがと」
「相澤さんだって女の子なんですから、俺を盾にして歩けばいいんです」
お、女の子?
この私がか?
盾に、なんて。
板東のくせに、ずいぶん生意気なことを言ってくれる。
慌てて彼から目を逸らした。
「あんたは細身だから、あたしの盾になんてならねーだろ」
そう言ってやりたかったけど、板東の背中は思ったよりずっと広い。
さっき触れた部分が妙に熱っぽい。