T&Y in神戸
毛足の長いラグ。
岸は視線を爪先に落としたまま顔を上げれないでいた。
「ーーーで。太一は、愛しい由香利ちゃんとのお泊まりデートだってのに必需品であろうコレを置いていったってこと?」
高井は手の中の四角い包みをクルリと回す。
岸は切り揃えたボブヘアーを揺らしながら俯いたままコクンと頷いた。
見送りの車内で太一から預かったモノーーーその真意が気になる岸は、太一を見送ったあと一旦社に戻り残った業務を終えて、わざわざ高井のマンションに寄ったのだ。
「俺は、」
分からないでもないよと高井はまじまじと包みを眺める。
「どういうこと?」
岸は首を傾げた。
「今までの太一の所業のせいだよ。」
「所業?」
「太一が女をとっかえひっかえしてたろ。」
岸は気まずそうに視線をさ迷わせる。
「あー、うん。ゴシップにもなったし、誰もが知ってるけど、でもそれは、」
「過去の事でも、由香利ちゃんにはまだ辛い事なんだろ。」
「……。」
「どうにも出来ないと分かってても、気持ちがついていかない事だってあるだろ。
由香利ちゃんが今まで恋愛経験があれば、それなりに男女の違いだって理解できたろうけど。」
「?」
「分かんない?
セックスに気持ちを求める女心と、気持ちがなくてもセックスが出来る男心ーーーあの、由香利ちゃんに分かれっていう方が無理かな。」
「それとコレがどう関係あるのさ?」
「“ホテル”」
「え?」
「ホテルだったろ?太一がそうゆうコトをしていた場所。」
「……。」
「なめちゃ駄目だよーーー彼女の想像力、いや、“妄想力”をなめちゃ。」
「も“妄想力”?」
「今頃、太一がフロントで手続きしている後ろ姿を見ながら、“過去の所業”を妄想してるだろうね。
思いっきり、マイナス思考で。」
「え…」
「流石の太一も、怖くて抱けないよ。」