T&Y in神戸
「……怒ってる?」
由香利は、皿に視線を落としたまま小さな声で呟いた。
「怒っては、いない。」
皿のスクランブルエッグをフォークで掬い、特製(多分)のトマトソースをナイフでのせる。
「……。」
「受付で説明されたとき、お前が聞いちゃいないと分かっていたのに、離れた俺が悪かったんだ。」
「……。」
「一人でキョロキョロしてれば、声を掛けられる。」
「ーーーごめんなさい。」
「もういい……ほら、」
項垂れる由香利の口元にフォークを差し出した。
「旨そうだろ?」
「……。」
おずおずと口を開ける由香利。
フォークを持つ手に伝わる、唇の感触。
ーーーエロ…
つい、唇を凝視してしまう。
ーーーキス、したい。
声をかけようとした野郎よりも、俺の方が下心満載だ。
「わ、美味しいーー卵がふんわりして、それで口の中で溶けるみたいになくなって、トマトソースのトマトの食感と酸味が絶妙ーーー?」
どんな顔で唇を凝視していたのか。
由香利が言葉を詰まらせた。
「……ん、よかった。」
おかわり行くだろ、と然り気無く誤魔化した。