T&Y in神戸
部屋へ戻り荷物を持つ。
夕刻7時には神戸を立つーーー十時間余り。
支払いを済ませ荷物をクロークに預けて、ホテルを後にした。
昨夜来た道とは違う道を行く。
スマホの地図に表示された『香りの家オランダ館』の文字。
「楽しみだね♪どれぐらいかかるかな?」
「そんなに急がなくても、逃げやしねえよ。」
軽やかな由香利の足は、繋ぎ止めて置かないと飛んで行ってしまいそうだ。
由香利の左手の指を絡めて歩道の内側を歩かせる。
同じように観光客がチラホラと、歩道を歩いて行く。
春の柔らかな日差しに、キャスケットから流れた髪がきらきらと輝く。
「なあに?」
由香利が視線に気づき、小首を傾げた。
「ーーー何でもない。」
見とれてた、と素直に言うには日が明るすぎる。
「あ、たあちゃん、犬っ!!」
由香利の興味が前から来る散歩中の犬に移るーーー犬ぐらい何処にでも居そうなものだが。
「わあっ、可愛い♪」
初老の夫婦が連れたゴールデンリトリバーに、手を振り払って飛び付いた。
「おはようございます。」
挨拶をして、突然の無礼を詫びると夫婦は微笑んで顔を見合わせた。
「可愛らしいお嬢さんだこと。」
犬と一緒にわふわふ言いながら、じゃれ合う由香利を始めて見る。
「犬が、お好きなのね。」
「は、はい…」
由香利は、俺を見上げて頬を染めて頷いた。
ーーー何なんだ?