愛なんてない



京は助手席をポンと叩いて言ったけど、わたしは首を横に振った。


「……わたし、後ろの方が好きなんです」


ボソボソと答えたわたしは、京の視線を感じて身を竦ませた。


咎めてるのかな? 冷たい硬い視線。


でも、わたしはこれ以上図々しくなりたくなかった。


京にずっとずっと迷惑を掛けっぱなしなのに、これ以上わがままになりたくなくて。


「……そうか」


京はそれ以上なにも言わずにシートベルトを締めて車を発進させた。


呆れられたかな……。


でも、図々しく甘えすぎるよりはいいよね?


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