愛なんてない
結婚して20年は経つのに、2人の初々しさと愛情と信頼は変わらない。
お互いに思いやって愛し合ってるのが、幼いあたしにもわかった。
そりゃああたしは初恋もまだだけども! きっときっと運命的な出会いが訪れるんだ。
親友の絵里はメルヘン過ぎて頭の中がお花畑だって笑うけど。
歩けないお母さんをずっとずっと支えてともに生きる。そんな厚い愛情を注いでくれる人が、いつかあたしにも。
……なあんて。
さすがに高校生にもなれば、あたしだって現実は理解できる。
お母さんとお父さんみたいな素敵な相手には恵まれそうにもないな。
だから、あたしはすこしあきらめ気味に絵里の紹介した人に逢おうかな、とぼんやり考えた。
中学からカレシの1人も作りなよ、とあたしの心配してくれる友達に申し訳ない気持ちもあるし。
それに、お母さん達を早く安心させてあげたかった。
だってお母さんは……。
その時に、ざあっと強い風が吹いて花びらが舞い落ちる。