小説家
ママ…?パパ…?
最後に二人に会ったのは、病院の遺体安置室。
私の両親は共働きで、いつも海外を飛び回っていた。
当時5才の幼い私を連れて行くのもどうかと考えたのか、私はおばあちゃんと暮らしていた。
それはもちろん寂しかった。
おばあちゃんは優しくていつも私によくしてくれた。大好きなおばあちゃん。
《澪ちゃん、いいお知らせがあるよ。》
《なぁに?おばあちゃん!いい事?》
《そう、とってもいいこと》
《なになに?早く教えてよおー》
《実はね、澪ちゃんのパパとママ、今度の土曜日に日本に帰ってくるんだって!》
《パパとママ帰ってくるの!?》
《そうだよ〜よかったねぇ〜》
《本当に本当に本当!?》
《本当に本当に本当だよ》
《パパとママに会える?》
《もちろん。いっぱい遊ぼうって言ってたよ。》
《本当に!?約束だよ!!》
《うんうん、約束約束。》
《やったああー!!!》
あの時のおばあちゃんの笑顔、今でも覚えてる。
そしてその日は来た。
でもその約束は果たされることはなかった。
朝早くから家に電話が掛かってきた。病院からだった。
両親が羽田からこちらへ向かう車に乗ってる途中、対車線から居眠り運転をしていた大型トラックが突っ込んできたのだ。
即死だった。
《ままぁっ…!!ぱぱぁっ…!!》