可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。


----------七瀬は、閉まっておきたいあたしの過去を、ここに引きずり出そうとしている。




そうわかっていたけど、あたしはただ黙って聞くことしかできなかった。




「愛さん、昔から姉御肌で『後星会』の活動に熱心に参加してて。いまだに同窓生はもちろん、教員や在校生たちからも人望の厚い人だから。……だから学校を卒業した後も、教員しか知らないような成星院学園の内部事情とか、生徒の個人事情とかにすごく詳しいんだ」




そこまで聞いて、『水原愛』という人のことがおぼろげに記憶の中から浮かんでくる。

中学生だったあたしと比べてもすごく小柄で、だけどすごいパワフルで、みんなから慕われていたひと。美人でエネルギッシュで、大勢いる『後星会』のメンバーの中でもひときわ目立っていた。




渚とは似てないけど、なんで『水原』って苗字で思い出さなかったのか。

渚にはお姉さんがいることも聞いていたし、渚が慕うくらいすごい人なんだって、事前情報は入っていたのに。


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