これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】

②甘い誕生日

「こらっ!邪魔しちゃダメだからね」

 私は足元にまとわりついてくる、クロをたしなめながらエプロンを身に着けた。

 家事などまったくしたことがなかった私が、この日のために買ったものだ。

 今日のための練習に身に着けただけなので、まだ数回しか使用していない。

 一度離れたクロだったけど、またもや私の足に体を擦り付けてくる。

 ちょっと動きづらいけど、可愛いからこのままにしておこう。

「何か手伝おうか?」

 キッチンのカウンターの向こうから、勇矢さんが心配そうにこちらを見ていた。

 私はスーパーの袋から買ってきた材料を取り出しながら答える。

「心配しないでください。ちゃんと練習してきましたから。一応食べられるものは作る予定です」

 あんまり自信はないけれど、それがばれてしまうと困る。私はできるだけ自然な笑顔を作った。

「その笑顔がなんだか怖いな。ふたりで作ったほうが早くできるだろ?」

「それじゃ意味がないですよ。誕生日プレゼントなんですから」

 私は彼の誕生日にケーキをプレゼントすることにした。でも今まで家庭科の調理実習でしか料理をしたことがない私にとって、ケーキを作るなんてことはハードルが高い。

 いや、ハードルっていうか棒高跳びくらいの難しさだ。

 なので土台は買ってきて、デコレーションだけすることにしている。

 それをきちんと伝えているのに、まだ心配そうな顔で勇矢さんはこちらをみているのだ。
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