これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「私こう見えても、美術は得意でした。デコレーションなら失敗なくできますから」

「でもな……」

「もう、いい加減諦めてください。そうだ!一時間ぐらいで準備ができますから、お散歩に行ってきてください。ほら早く!」

 私は勇矢さんの背中を玄関まで押した。

「本当に大丈夫なんだな?俺がでたら戸締りちゃんとするんだぞ」

 まるで父親のような言い方に笑いそうになるが、ここで笑うとまたあれやこれやと話をして遅くなりそうだ。

「わかりました。ちゃんとお腹空かせて帰ってきてくださいね」

 私は笑顔で彼を送り出した。

「さて、超特急で進めないと!」

 私は腕まくりをしてキッチンへと急いだ。クロは私が構ってくれないとわかると、ひとりでソファに行きあくびをしていた。

 まずは食事の準備をする。そうは言っても来る前にふたりでデパートの地下で調達したものを並べるだけだ。

 本当は彼氏の誕生日に手料理を振るまうのとか、憧れていたんだけどな……。

 でも出来ないものはしょうがない。私は潔く諦めて食事も買ってきたものを並べることにした。きっと勇矢さんは私の気持ちを汲んでくれるはずだ。

 唯一、出来そうなことだけを頑張ることにした。

 ネットで色々と検索していて私ができそうだったのが、キャラチョコと言うもの。幸い美術の成績はよかったし、細かい作業は大好きだ。

 だから昨日の夜頑張って作ったチョコを、溶けないように保冷剤いっぱいのバッグに入れて持ってきている。あとは生クリームとフルーツを飾り付けるだけだ。
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