これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「今、彼女は“綾上恵”だ。まだ間に合うんじゃないのか?」

 そう言って自分の机から、茶封筒を取り出した。

「俺がここまでおせっかいしたんだ。ちゃんと結果出せよ」

 宗治はそれだけ言うと「一時間席外すから、今日くらいは呼び出すなよ」と言って部屋を出ていった。

 ……俺の言葉など一体聞かずに。俺がこの先どうするのか、わかっているような態度だった。

 結局宗治の方が、俺よりも俺のことを分かっていたということか。

 でも確かに宗治はそういう男だ。軽いようで、周りをよく見ている。そしてその判断が間違っていることはない。それを俺は近くでみてわかっていたはずだ。

 手渡された茶封筒の中身を見る。そこには“綾上(二宮)恵調査票“と書かれた書類があった。きっとどこかの興信所でも使って調べさせたのだろう。

 俺はその資料を読んで決意する。

 本当に彼女のためになることが、何なのか。今度こそは独りよがりじゃない。彼女の望むことが何なのか。

 俺はあの日、あのとき、あの公園で彼女という人と出会ってしまった。だからこそ……最後まで彼女の“幸せ”に責任を持ちたいと思う、。

 ……それたとえ、どんな形になるとしても。

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