これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 立派な門の前まで女将がわざわざ出向いて挨拶をしてくれる。

「まぁまぁ綾上さん。いつもご贔屓にありがとうございます。あらまぁ、若さんにこんなかぁいらしい妹さんがおったやなんて……。本日はおめでとうございます」

 私はしっかりと姿勢を正して、門をくぐった。

「先方さんも、お父様たちもすでにお見えです。少し急がはったほうがいいんちゃいますか?」

 その言葉を聞いて、私が急ごうとしたそのとき兄の携帯が鳴り響いた。

 懐から携帯を取り出すとディスプレイを見て、一瞬眉をひそめた。

「悪い恵、先に行ってくれ。女将すみませんが、妹を先に案内してやってください」

「はい。かしこまいりました」

 歩き出した女将に続いて私も歩き始める。ちらりと後ろを振り向くと兄が誰かと神妙な顔で電話している姿が目に入った。

「失礼します」

 女将さんが声をかけてくれ、開けらた襖から中に入る。

「恵、遅いじゃないか。小関さんがすでにお待ちだぞ」

 すぐに父に声をかけられて、頭を下げる。

「遅くなりまして、申し訳ありません。兄は今、緊急の用件の電話があったようでもうしばらく時間がかかりそうです」

 顔をあげてやっと今日のお見合い相手の顔を見る。

 私の旦那様になる人。小関正人(おぜきまさと)さん。柔らかそうな雰囲気で、全然代議士っぽくない。

 優しそうな人でよかった。それなりの覚悟はしていたけれど第一印象はやはり大事だ。
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