これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「“綾上の娘”として育ててしまったことが、間違いでした。兄の背中を見てきたせいか、家のために自己を犠牲にすることが普通のことであると思いこませてしまいました」

「おいおい、父さん。俺は別に家のために政治家になったわけじゃないよ。天職だと思ってるし」

 口を挟んだ兄を母が「大輝は少し黙っていて」と制した。

「だから恵は、あなたと綾上の家との板挟みにあい、泣くことになったのです。恵はこういう家に生まれてきたにしては、まっすぐに育ちすぎました。だからこそ親の私たちがもっと気持ちを汲んであげるべきだったのだと思います」

「そんな、お父さん……」

 距離があると思っていた父親の本音を初めて聞いた。本当の私の気持ちなんて届くはずがないと、最初から諦めていた。でも、こんな風に自分のことを考えてくれていたと知って、胸が苦しくなる。

 どうせわかってくれないからと、理解してもらおうとしなかった私が悪かったのだ。

「私たちも、もう恵の泣きはらした顔はみたくありません。しかし……正直急に現れたあなたに“はいどうぞ”と渡すのもどうかとも思うんですが……」

 父も母も勇矢さんの存在を知ったのは今日のはずだ。確かにほかの人のお見合い当日にこんなことになるなんて、思ってもいなかっただろう。

 また私はこの京都で勇矢さんが来てくれるのを待っていないといけないの? 

 このままでは今までの自分と一緒ではないのか? 両親や兄が決めたことだけを守るだけでいいの?

 私はとっさに、頭を畳につけ言い放つ。

「恵!?」

 母の甲高い声が部屋に響く。
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