これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「あなた本当に何でも顔にでてしまうんですね」

ボソボソと呟かれて聞き取れなかった。

「え? なんて言ったんですか?」

「何でもありませんよ。失礼なことを言った代わりにランチをご馳走させてください」

眼鏡の奥の目が優しくほほ笑んでいる。

私は「はい」と、また後先考えずに返事をしてしまっていた。

だって……断る理由がないんだもの。

はっきり言ってしまえば彼に興味がある。

丁寧な言葉遣いと見かけから、どこか真面目でとっつきにくそうなのに、その中身は世話焼きで良く笑う。

他にはどんな顔をするんだろう? コーヒーを淹れるのが上手だからきっと紅茶よりもコーヒー派なんだろうな。

好きな食べ物はなんだろう?

どうしてこんなに気になってしまうのだろうか? でも知りたい。もっと知りたい。

私とクロをあの時救ってくれた彼との再会を、この時の私は“運命”と言う言葉で飾り立てようとしていた。

そうしてはいけないことを、自分が一番理解していたはずなのに。
< 53 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop