これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
タクシーに乗って十五分。

コーヒーの香りの漂う俺の部屋には、二宮さんのはしゃいだ声が聞こえてきた。

「クロ、いつの間にこんなことできるようになったの!?」

子猫がキャットタワーで披露する技をほめたたえている。

どこか子猫も自慢げに見えるのが不思議だ。

ひとりと一匹をキッチンから眺める俺の心も穏やかで、自然と笑顔が浮かんだ。

「コーヒーが入りましたよ」

「ありがとうございます」

俺の声に合わせて彼女はソファに腰掛けた。

その膝の上に子猫がさも当たり前のように、飛び乗る。そして丸まり気持ちよさそうに顔をうずめた。

ずうずうしいな……。

自分の飼い猫にも関わらず妙な気持ちになる。

チラリと視線を向けると「ニャーウ」とひと鳴きしてまた、彼女へと体を預けた。

「クロは遊びすぎて眠くなったみたいですね」

彼女の白い手で頭をなでられた猫は、気持ちよさそうだ。

それを見つめる彼女の顔も、先ほどレストランでみせたようなこわばった表情ではなく柔らかくなっていた。

子猫の力は偉大だな。

マグカップの中のコーヒーに息をかけて冷ましながら彼女と子猫を見ていると、ふとポロリ口から言葉が漏れた。
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