スイートな御曹司と愛されルームシェア
 咲良は部屋に入ってソファに座ろうとしたが、そこには男物の白いシャツとストライプネクタイ、ダークブラウンのスーツが脱ぎ捨てられていた。それを脇へよけたとき、下から咲良の白いブラウスと、ライトグレーのスカートとジャケットが出てきてギョッとする。

(この順番って……どう見ても私が先に脱がされたってことよね)

 そこまで考えて気づく。

(彼は〝したのは私の方〟だって言ってた……。つまり……私が自分で脱いで、彼の服も脱がせたってこと?)

 その考えに、信じられない思いで首を振りながらソファに腰を下ろす。

(や、待って。咲良、落ち着くのよ。とにかく落ち着いて考えよう。まずは昨日のことを思い出すのよ……)

 ストッキングの膝に肘をついて、痛むこめかみを揉みながら、昨日の記憶をたぐり寄せる。

(えっと、いつも通り午後二時に創智学院に出勤して、小学六年生の冬期英語講座と、中学一、二年生の来年度準備講座の英語を担当して……)

 それから恭平くんと飲みに行ったんだ、と思い出して顔を上げたとき、キッチンから卵を割る音が聞こえてきた。それから卵をかき混ぜるシャカシャカと小気味のいい音。それらを思考から閉め出し、また記憶をたぐることに専念する。

(そうそう、恭平くんから〝大事な話がある〟って言われて、ドキドキしながら行ったんだっけ……)
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