スイートな御曹司と愛されルームシェア

 結局翔太が戻ってこないまま、咲良は最後の出勤日を迎えた。

 一人、職員室の自分のデスクに座り、重いため息をつく。あんなに思い入れのあったこの塾も、果穂に株式を売却してしまった今、もう咲良のものではなくなってしまった。英進会ゼミナールのフランチャイズ化の話も、退職するのが咲良だけだということもみんな知っていて、気を遣っているのか気まずいのか、咲良に自分から話しかけてこようとする講師は誰もいない。あんなにも充実していた職場のよそよそしい雰囲気に、咲良は虚しい気持ちになりながら、英進会の講師への引き継ぎ用に、生徒の小テストの点数をパソコンに入力し始めた。

 入力が終わった後、ふと思いついて、インターネットの検索画面に〝楢木翔太〟と打ち込んでみた。フェイスブックでも見つかればいいな、と思っていたのだが、彼の名前では何もヒットしなかった。続いて彼の元勤務先の〝TDホールディングス〟を打ち込む。

「えっ」

 一番上に表示された同社のホームページを開いて驚いた。〝株式会社TDホールディングス〟とは、国内の準大手、TDグループの代表法人で、同グループには主に大学などの高等教育機関を対象にコンサルティングやマーケティング業務を行うTDアドバンス、学習参考書の編集・発行を行うTD出版、企業向け人材開発・人材教育プログラムの開発・提供を行うTDネクストなどがある。

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