スイートな御曹司と愛されルームシェア
 味方ピッチャーの球をバッターがはじき返し、数回バウンドした打球を優弥が懸命に走ってミットに捕らえた。すぐにファーストに投げて、バッターをアウトにした。これでスリーアウト、攻守交代だ。

「優弥、ナイスプレー!」

 チームメイトに声をかけられながら、はにかんだ表情で優弥がベンチに戻ってきた。

 続く九回裏の大阪フェニックスの攻撃。頼みの五番、六番打者が相手ピッチャーに抑えられてしまったが、ツーアウトでようやく七番打者が出塁した。続く八番は優弥だ。

 みんなの期待を一身に背負い、これ以上ないくらい緊張した硬い表情で、優弥がバッターボックスに立った。

「まだ追いつけるぞーっ!」
「がんばれー」

 みんなからの声援を受けながら、優弥が思いっきりバットを振ったが、ボールは鋭い音を立ててキャッチャーミットに収まってしまった。

 優弥が肩を上下させてバットを構え直した。咲良も懸命に応援する。

「優弥くん、落ち着いて!」

 その声が届いたのか、次のボール球を優弥が落ち着いた様子で見送った。

「えらい、よく見た!」

 応援のベンチで誰かが声を上げた。

 続く三球目。優弥が力一杯バットを振った。ボールが三塁の方向へ飛び、優弥は全速力で走り出す。

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