スイートな御曹司と愛されルームシェア
「よかった。どうしても今日、会いたかったんです」

 翔太が上気した頬で言った。その言葉にさっきまでの葛藤が跡形もなく消え去り、咲良の胸が喜びに震える。久しぶりに会ったからゆっくり話をしたい、そういう意味なのかもしれない。それでも、彼がこうして訪ねてきてくれたことが何よりも嬉しい。その気持ちを素直に言葉にして伝える。

「私も会いたかった」

 咲良が言ったとたん、翔太が片手を伸ばして咲良に触れようとした。そのまま触れてほしかったのに、彼は思い直したようにその手を握って下ろした。

「そう言ってもらえて嬉しいです。もう二度と……会ってもらえないんじゃないかと思ってたから……」

 彼の言葉に、咲良が彼に言ったこと――〝あなたを好きになったことなんか一度もないわ〟と言ったこと――を思い出した。

「どうして会いに来てくれたの?」

 探るような咲良の言葉に、彼が少しかすれた声で答える。

「最後に咲良さんを訪ねたとき、咲良さんが五階から俺を見ていてくれたから……。だから、きっと俺を好きになったことなんか一度もない、という言葉が、俺に戸田家での居場所を作るためについた嘘なんだろう、と思ったんです。そうでしょう?」
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