スイートな御曹司と愛されルームシェア

「なっ……」

　思わずベッドの上を後退った咲良は、そのまま派手な音を立ててベッドから落ちた。弾みでスマホが手から落ちて床を滑る。サイドテーブルが倒れて、のっていたバッグが落ち、財布やらポーチやらが散らばった。

「咲良さん、大丈夫ですかっ」

　男があわてたようにベッドの上から覗き込んできた。見上げた咲良に見えたのは、咲良より少し年下だろうか、アイドルにいそうなかわいらしい顔立ちの男の上半身。しかも、裸だ！

「きゃーっ」

　男から逃げようとフローリングを這ったとき、脚に触れる床板からひやりとした冷気を感じて、背筋がゾクリとした。おそるおそる見下ろすと、目に入ったのはパウダーピンクのブラジャーとショーツにキャミソールを着けただけという自分の体。

「いやーっ！」

　あわてて脚を引き寄せ、胸元を隠したとき、ベッドの下に落ちたスマホから、『咲良っ、どうしたのっ？　大丈夫？』と母の焦り声が聞こえてきた。

「咲良さん？」
　ベッドの上の男は、目を丸くして咲良を見ている。その間にもスマホからは『咲良？』と母の呼ぶ声が聞こえてくる。