スイートな御曹司と愛されルームシェア
その日咲良が受け持つ講座の一つ、高三英語は、私立大学の後期試験に備える受講生を含め、大学に合格した受講生にとって最後の講義だった。講義の後、五人の受講生のうち最後まで教室に残っていた二人の女子生徒が咲良に近づいてきた。二人とも志望校に合格している。
「岡崎先生」
「どうしたの?」
咲良が笑顔を向けると、二人ともうつむいてもじもじし始めた。
「困ったことでもあるの? 力になるから言ってみて」
咲良が二人を覗き込むようにすると、さらさらセミショートヘアの坂本明日香が顔を上げて言った。
「今日で先生とお別れなんて寂しいです」
明日香の言葉に咲良の胸がじぃんとする。
「そう言ってもらえて嬉しいわ。でも、坂本さんたちとお別れするってことは、坂本さんたちの大学合格っていう目標が叶ったからなのよ。寂しいけどおめでたいこと。大学生活、思いっきり楽しんでね」
「はい」
「授業の最後でも言ったけど、大学に合格したから夢が叶ったわけじゃない。今はスタート地点なの。だから、これからも今までのように努力することを忘れないでね。たとえすぐに成果は出なくても、何かの形で得るものはある。努力はあなたを裏切らないから」
「はい。先生、今までありがとうございました」
こんなに自分を慕ってくれる生徒がいることが嬉しくて、咲良の目頭が熱くなった。
「合格祝賀会には来るんでしょう?」
「はい」
「待ってるわね」
二人の女子生徒はうなずくと、もう一度礼を言って教室を出て行った。