スイートな御曹司と愛されルームシェア
 彼女たちに会えなくなるのは寂しいけれど、また新しい生徒が入ってくる。その生徒たちが目標に向かって着実に進めるよう、また力になりたい。

 決意も新たに咲良は事務室に戻った。果穂は体調が優れないという理由で今日は休んでおり、代わりに現代文の女性講師が受け付けデスクに座っていた。

「お疲れ様です」

 咲良が声を掛けると、現代文担当の奥田は気まずそうに視線を落として、「お疲れ様です」とつぶやくように言った。その様子に、咲良は首を傾げる。

(奥田先生には小学生の子どもさんがいたはずよね。ご主人の帰りが遅いとかで、お子さんのことが気がかりなのかしら)

 そう思って咲良は言う。

「奥田先生、私、今日の講義はもう終わったので、よかったら受け付け代わりますよ」

 咲良の声に、奥田はチラリと恭平を見た。その意味ありげな仕草に、咲良は眉を寄せる。目が合った恭平が、自分のデスクから立ち上がって咲良に空いているC教室を指さした。咲良が怪訝に思いながらもC教室に入ると、後から入ってきた恭平がドアを閉めて、咲良に椅子を示した。

「何か問題でも?」

 これまでにも、恭平とはこうして塾の経営方針や生徒のことについて話し合ったことがある。咲良は恭平と向かい合う椅子に座った。

「今日きちんと話そうと思ってたんだけどね」
「うん」

 何を改まって、と思っていると、恭平が話を続けた。

「実は、咲良さんが持っているこの塾の非上場株式を売ってほしいんだ」
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