スイートな御曹司と愛されルームシェア
 甲子園出場校の元一番ライトにはどのくらいの球速なら勝てるだろうか、と考えて、咲良は言う。

「翔太くんが倍の球速でやるなら」
「百四十キロか。なかなか厳しいな」
「ハンデよ、ハンデ」
「何賭けます?」
「今日のランチ!」
「了解。一ゲーム二十球のうち五回打てたら咲良さんの勝ち、ホームラン賞を取ったら俺の勝ち」
「そんな条件じゃ、すぐに後悔することになるわよ」

 大口を叩いてバットを構えたものの、すぐに後悔したのは咲良の方だった。まず、ボールが全然バットに当たらないのだ。

「おりゃっ」

 前方のスクリーンに映し出された選手が振りかぶって投げるタイミングで、横の穴からボールが出てくる。それに合わせて気合い十分でバットを振るが、虚しく空を切るだけ。

「か、かすりもしない……」

 盛大な空振りをした後、落胆しながら隣のケージを見ると、翔太が涼しげな顔でバットを構えていた。次の瞬間、体の重心を移しながら流れるようにバットを振ったかと思うと、打球は大きく伸びて、練習場上部のホームラン盤に当たった。

「嘘……翔太くん、いきなりホームラン賞を取ってるよ……」

 負けてられない、とばかりに「とりゃっ」とバットを振ると、隣のケージから笑い声が聞こえてきた。
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