スイートな御曹司と愛されルームシェア
「そうやたらめったら振り回してもダメですよ。タイミングを合わせないと」
「くー」

 ボールのコースはわかったから、後はタイミングだけのはず。「うりゃっ」とかけ声も十分、思い切ってぶんっと振った直後、ボールが真後ろのネットに当たった。

「今のは振るのが早すぎたのね……」

 次はタイミングを計って振ったが、初めて当たったボールの勢いに負けて、バットが後ろにはじかれそうになり、手にじんじんとした痺れが残った。

「悔しー」
「でも、当たりましたよ」

 隣のケージから聞こえてくる、翔太の笑みを含んだ声。

 結局コインを三枚買って六十球分チャレンジしたが、打てたと呼べるものは十四回だけだった。

「三で割ったら、一ゲーム当たり五回にならないし、翔太くんはホームラン賞を三回も取ってるし、文句なしで翔太くんの勝ちね」

 がっくり肩を落とす咲良を見て、翔太が慰めるように言う。

「初めてのわりにはいい線行ってたと思いますよ」
「まあ、バットを振り回すだけでも楽しかったけどぉ、いい線行ってたっていうのは絶対に言い過ぎよ」

 咲良は大げさに両手を広げて首を振った。

 それからレンタルのバッティンググローブとバットを返してから、センターを出た。

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