秘密の館



トントントン。



翌日、海人の部屋を館のお手伝いの
宮原 美紀はノックをして訪れた。

彼女は、若い外見のわりに28歳。
少したれ目で、優しい笑顔が素敵な女性
だ。

海人の兄、明(アキラ)が行方不明になる以前
からここで働いている。


「海人君、朝食の時間ですよ?
起きてください。」

そう言いながら、彼女は海人が寝ている
ベッドの上を見つめていると真美の姿に気
が付いた。

「........あら。.............真美ちゃんもね。」

優しい笑顔で微笑みながら言った。

すると海人は、 むくむくと動きながら
まだ眠たそうに体を起こした。

「........ん゙ー。」

「支度を済ませたら、下へ降りて下さい
ね。」

寝起きの海人に彼女は優しい口調でそう
言うとここの部屋を出て行こうとした。

どうやら彼女は、朝食の準備が整っている
事だけを知らせに来たようだ。

すると海人は、お爺ちゃんもお婆ちゃんも
何も知らないと言って兄さんの事は何も結
局分からないままであったために、美紀さ
んからも何か知っている事が少しでもあれ
ば教えて欲しいと思いこう言いだした。

「ねぇ、美紀さん。」

彼女は扉のドアを開けていた手を止めて海
人の方を振り返り言う。

「なんですか?」

「美紀さんは、兄さんが行方不明になる前
からここで働いているんだよね?」

「そうよ。」

「それなら、兄さんの行方について何か知
らないかな?」

「........分からないわ。でも、不可思議なこ
とがあって........。」

「え?」

「明君がここの屋敷へ来た日の夜に図書室
の扉が少し開いていたから私は中へ入って
見たの。そしたら明君の姿があって........だ
けど、その様子....少しおかしかった。
本を探す様子も無く、驚いたような表情を
浮かべていたんです。」



彼女は出来事を語り続けた....。


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