彼が涙を流した理由
そうして、どんどん月日は流れていった。





それは、ある秋の特別寒い日のこと。





「やっほー、裕之君」





あたしは千晶のおかげで裕之君とペアになり、いつも通り放課後に図書室へ向かっていた。





「あぁ、あさひちゃん。寒いね」





裕之君はパタリと本を閉じた。その細い手は、真っ赤になっていた。





「図書室にも、早く冷暖房つけてほしいねー」





「まぁ、図書室なんて使う人少ないから。仕方ないよ。………あ、確か、図書準備室に毛布があった気がする。とってくるね」





いくらあたしが慣れてきたとはいえ、やっぱり3年間続けてきたベテランには敵わない。





しばらくして、裕之君は毛布を持ってきてくれた。





「ありがとう」





「どういたしまして。………ただ、毛布が1枚しかなくて……」





あるのは、少し大きめの毛布1枚。





「…………一緒に、使おっか…」





「えっ?」





「どっちかだけしか使えないって嫌じゃん。この毛布、そこそこ長さあるし…大丈夫だと思うんだけど……嫌?」





あたしが小さく頷くと、裕之君は毛布を広げた。
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