Kiss of a shock ~涙と~
ドアが開いて、万理香が顔を出した。


万理香に逢う、この瞬間まで、健二は心の中で万理香を幾度か犯していた。


考えれば考えるほど、汚らわしいと自分でも感じるほどの酷さで、万理香を陵辱し、万理香の泣き顔から直人の怒りを、その苦しみを想像して笑っていた。


けれど、その負に塗れた感情が、瞬時にして拭い去られた。


健二は、青褪めて、眼に見えてやつれた万理香に思わず顔を寄せて言った。


「どうしたの?!」


万理香はえっと言って後ずさった。


「え、じゃないよ、どうしてそんなに・・・。」


いいや・・・万理香から何も聞かなくても察しはつく。


「直人か・・・。」


そう呟くと、万理香はさっと顔を逸らした。


「そんなんじゃ・・・。」


そんなんじゃないって、何が?


だが、そう言い返すのも憚られて、万理香の顔を見つめて一歩下がった。


「今日は帰るよ。」


万理香が顔を上げる。


泣き腫らした目が、健二を捕らえた。


「そんな顔して・・・何もないなんて言えないからね。」


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