家族ごっこ
「お世話様でした」
壁紙の傷。
絨毯のせいでまばらな色の床。
日に焼けた柱。
染み付いた匂い。
この匂いに染まった私は、最後な訳だ。
「じゃあいこうか、ママ」
「はいはい」
柄にもなくしゅんとした私の、今度は頭を撫でて。
「ママ、寂しいな」
ママも悲しそうに笑う。
「羽故がいなくなって、ママ一人ぼっちになっちゃうのか」
「ママ」
「パパにどんなに酷いことされても、ママは羽故がいたから生きてこられた」
ぎゅうっと抱き締められる。
ママの匂いに、温もり。
愛されてるのがわかる。
恥ずかしさと嬉しさで、胸がくすぐったい。
「ついてきてくれて、ありがとう」
消え入りそうなママの声に、私はなんて答えたらいいかわからなかった。
ママが弱いのは知ってる。
私だって弱いから、二人でなんとか支えてきた。
「ごめんねママ」
わがままでママを一人ぼっちにさせてしまう罪悪感に、謝るしかないのだ。