家族ごっこ
走り出した車に伴って、ママが遠退く。
さて、と車内を見る。
三列シートで、一番後ろに私が乗っている。
隣は楷さん。
真ん中にあのボディービルダーが。
一番前は、運転手のみ。
筋トレしてないのに安心したぜ、ふぅ。
「さて羽故さん」
隣の楷さんがスーツを直しながら私を見やる。
「お望み通り、アルバイトの内容を説明しますね」
「国家の陰謀か!」
「違います!」
私の妄想、否定されたぜ。
「今から向かうのは、とあるアパートなんです」
「はあ…」
「そこに住んでもらうんですが」
そして、彼はにっこり笑って。