佐藤くんは甘くない
これ以上ひまりちゃんに迷惑かけるわけにもいかないし、何か誤魔化す方法ないかなぁーと思っていたら、
「次ー、移動だからさっさと出ろー」
と女とも思えない強い口調で、委員長が教室のドアの前でそういった。
「ひまりちゃん、い、移動教室だし。話はあとにしよう!」
「……」
ひまりちゃんはしばらく納得いかなそうにしていたけれど、しぶしぶ机から教科書を取り出すと立ち上がる。
「瀬尾もさっさと移動しろ」
「へいへい」
きっと睨みを利かせると、瀬尾はささっと自分の机から教科書を出すと、
真ん中でまだ用具の支度をしていた佐藤くんに、
「佐藤、行こうぜ」
と、なんと佐藤くんに話しかけた。