佐藤くんは甘くない
佐藤くんは私に向ける声音よりも幾段柔らかな口調で、
「別に一人でいける」
「照れるなよ、可愛い顔が台無しだぜ」
「死ね」
げすっと立ち上がったと同時に、すねにけりを入れる佐藤くん。
し、知らなかった。
佐藤くんと瀬尾って仲良かったのか。
「こはるちゃん?遅れちゃうよ?」
「……あ、ぁあ、うん!」
いきなり声を掛けられて、私も慌てて立ち上がる。ええっと、次の教科ってたしか化学……ええっと、化学化学……っ。
机に物を押し込む私の性格を直してやりたいっ。
「あー、先に行ってていいよ!」
「……あ、うん。じゃあ先行ってるね」
ゆっくり歩くから、と言い残してひまりちゃんが教室を出て行く。